参加者レポート - GPUクラウドAI推進プログラム -
住宅流通に⾰命を起こすAIx3Dの研究開発
株式会社スタイルポート

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2025年2月時点
開発/研究の目的
現状、建築物の3Dモデル制作には高度な専門知識と多大な時間が必要となり、コスト面や人材不足が大きな課題となっています。
また、建築図面を正確にトレースするためには建築設計の深い理解が欠かせず、3DCGに慣れたモデラーでも作業負担は相当です。
本開発/研究では、AIや画像処理技術を活用し、既存の建築図面や写真等から自動的・半自動的に3Dモデルを生成するソリューションを提供することで、従来の手作業に依存するプロセスを大幅に効率化します。これにより、専門知識の壁を下げると同時に、制作時間とコストの削減を実現し、Web上での建築物3Dモデル活用を一層促進することを目指しています。
さらに、この結果、設計段階での迅速な検討や、施主・顧客へのわかりやすい提案、さらにはバーチャル内覧やデジタルツインなど、多様な用途への応用が期待されます。
全体のプロセス
パンフレット図面や平面詳細図、矩形図、展開図など複数の建築図面から、壁や床(部屋)、天井、梁、ドア、窓、収納、棚、枠、開口、バルコニー、設備、ライトなどの要素を抽出し、それらをポリラインとしてデジタルデータ化します。
次に、各要素の寸法・高さ情報を平面詳細図や矩形図、展開図から推論し、部屋同士の位置関係やドア・窓の高さ・大きさなどを正確に把握します。これらの情報を統合して3Dモデルの基本構成要素を自動生成し、寸法誤差を最小化しながら立体形状へ変換します。
最終的には壁の開口や設備の配置まで正確に再現された精緻な3Dモデルが完成し、デザイン検討や可視化、シミュレーションなど多様な用途で活用可能となります。
使用されているAI技術やアルゴリズム
ディープラーニングベースのセマンティックセグメンテーション技術を用いて、建築図面全体を壁やドア枠などの要素ごとに大まかに領域分割します。
その後、小さな建築要素(細い内壁や小さなドア枠など)の欠落を推論する学習過程を経て、Generative Adversarial Network(GAN)を用いたリファインメントにより見落とされた要素を補完・再構築します。
最終段階では、ヒューリスティクスを活用してセグメンテーション境界を単純化し、ノイズや不正確さを除去した上で高精度なベクトルデータを生成します。
これにより、高解像度かつ複雑な要素を含む設計図面であっても、既存手法を上回る精度と効率でベクトル化を行える点が大きな特徴となっています。
システム構成
本システムは、まず「図面と寸法入力部」で建築図面(平面図や立面図など)や寸法情報を入力し、次に「図面ベクトル化部」でセマンティックセグメンテーション等を用いて図面をベクトルデータとして抽出します。
続いて「Primitive抽出部」で壁やドア、窓、梁などの建築要素を基本形状ごとに識別し、「Polyline生成部」でこれら要素の境界や輪郭をポリライン化します。次に「寸法リサイズ部」で入力寸法と照合してスケーリングを行い、「高さ情報推論部」で矩形図や展開図などの情報を統合して各要素の高さを推定します。さらに「3Dモデル生成部」によりポリラインと高さ情報を組み合わせて3次元形状を自動生成し、最後に「3Dモデル出力部」で各種ファイル形式に応じた3Dモデルを出力します。

進捗状況と計画
現在、社内でのアルゴリズム実装とベータ版システムの検証を並行して進めており、基本的な図面ベクトル化処理から3Dモデル生成までの一連の流れが概ね動作する段階に至っています。
特に、壁やドア、窓といった主要要素の抽出とポリライン化については精度の向上が確認でき、寸法情報のリサイズ機能も想定通りに機能しています。
一方で、一部の図面で誤検出や欠損が発生する課題が見つかっており、学習データの追加や推論ロジックの改善が必要とされています。また、生成された3Dモデルの品質を検証するテスト項目や評価指標を再検討する中で、実際の設計変更や特殊要素に対応するための手法強化も求められています。
今後はこれらのフィードバックを取り込みつつ、精度と処理速度のさらなる向上を図る予定です。