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Webサイトへの集客数をどうやって増やすか、SEO対策に日々頭を悩ませている方も多いと思います。
Webサイト全体をHTTPS(暗号化通信)にする「常時SSL」のSEO効果については、数年前から議論されていますが、今回は実際の効果はどれくらいか、HTTPS(暗号化通信)のメリットとデメリット、「HTTPS(暗号化通信)化は早い方が良い」といわれる理由などをお伝えします。
HTTPS(暗号化通信)はどのくらいSEO(検索順位)に影響するの?
日本の検索シェアの大半がGoogleとYahoo!に占められていることはご存知かと思います。
2014年のはじめ、世界最大級の検索エンジンGoogleは「HTTPS(暗号化通信) をランキングシグナルに使用します」と公式に発表しました。
簡単に言えば、「HTTPS(暗号化通信)かどうかがSEO(検索順位)の判断基準になりますよ」ということです。
一方のYahoo!も、2011年からGoogleとほぼ同じ検索エンジンの仕組みを利用していて、当然GoogleのランキングシグナルがYahoo!のSEOにも影響するものと考えられます。
では、Googleの発表したHTTPS(暗号化通信)のランキングシグナルは、実際にSEOに対してどの程度影響があるものなのでしょう。
Googleのアンドレ・リパッセ氏(サーチクオリティ・シニアストラテジスト)は、Googleが評価する重要な3つの判断基準についてQ&Aの中で発言しています。
【Googleが評価する重要な3つの判断基準】
- 「リンク」:リンク数。内部・外部を含むあらゆるリンクがそのコンテンツに集まっているか。
- 「コンテンツ」:単語数。検索キーワードがどのくらい含まれているか。
- 「RankBrain」:関連性。検索キーワードに関連した言葉がどのくらい含まれているか。
このように実は、HTTPS(暗号化通信)は重要な判断基準には含まれていません。
Googleは常に、”ユーザーにとって良質なコンテンツであるかどうか”を重要な判断基準として、検索エンジンの仕組みを変更しています。
ですから、コンテンツの中身の重要性に比べれば、HTTPS(暗号化通信)がSEO(検索順位)に及ぼす影響は大きくないということです。
HTTPS(暗号化通信)にするだけで、魔法のようにぐんぐん検索順位が上がるわけではないことを忘れないようにしましょう。
しかし、HTTPS(暗号化通信)がSEOにほとんど関係がないのかというと、決してそうではありません。
Googleが公式発表しているように、HTTP(暗号化なし)よりもHTTPS(暗号化通信)の方が高く評価されることは間違いありません。
「安全なWebサイト=ユーザにとって良質」の図式にあてはまるからこそ、HTTPS(暗号化通信)対応のWebサイトがSEOでも評価されるのです。
検索エンジンに「評価されるWebサイト」と、知らないと怖い「警告表示」
「まだHTTPS(暗号化通信)にしなくてもいいのでは?」という意見をよく目にします。
GoogleはHTTPS(暗号化通信)をランキングシグナルに入れる理由を公式ブログでこう語っています。
ユーザーがもっと安全にWebサイトを閲覧できるよう、すべてのWebサイト所有者の皆様に HTTP(暗号化なし) から HTTPS(暗号化通信) への切り替えをおすすめしたいと考えています。
この言葉を裏付けるように、Googleの昨今のHTTPS(暗号化通信)標準化の動きにはめざましいものがあます。
ここ数年で、安全でないWebサイトを見分ける仕組みを、ブラウザや検索エンジンの判断基準に次々に追加しているのです。
逆をいえば“安全に使えるWebサイトをブラウザも検索エンジンも評価する”となるのです。
Googleは2017年1月にリリースしたWebブラウザ「Chrome 56」から、パスワードやクレジットカード情報などの入力を求めるページが、HTTPだった場合、アドレスバーに「保護されていません」と警告が表示されるようになりました。
もし、自分がWebサイトのユーザーだったら、これを見てどう思うでしょう。
“保護されていない”Webサイトは、なんとなく何が起こるかわからない不安に駆られませんか?
さらに近い将来、パスワードなどの入力画面だけでなく、すべてのHTTP(暗号化なし)のページに対して、「!」マークと「保護されてません」の警告を赤い文字で表示することも予告しています。
ここまで明確な表示だと、頑張ってSEOで集客を増やしても、Webサイト自体の利用者が減ってしまいそうですよね。
そして、検索結果の方にもすでに変化がおきつつあります。
先日Googleの検索エンジンは、検索エンジンがページを見つけた時点でHTTPS(暗号化通信)でも接続できるかをチェックし、接続できればHTTPS(暗号化通信)の方をインデックスとして表示するように仕組みが変わりました。
これは私の想像ですが、GoogleがHTTPS(暗号化通信)の標準化をこのペースで進めれば、ブラウザの警告と同様、検索結果の方でもHTTP(暗号化なし)に対してマイナスの変化が起きてもおかしくないのではないでしょうか。
“ユーザーが安心して使えるWebサイト”をつくることは、運営者として当然かつ重要なミッションです。
それができているかを、検索エンジンやブラウザ側が判断して、ユーザーに伝える時代が来てしまったのです。
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どんなページをHTTPS(暗号化通信)にすると効果があるの?
SEO対策をするときに、まず検索順位を上げたいと考えるページはどこでしょうか?
「トップページ」や「カテゴリページ」などWebサイトのメインになるページではないでしょうか。
先の通り、HTTPS(暗号化通信)には”良質なページ”の順位を奪うほどの効果はありません。
では常時SSLのSEO効果とは、具体的にどのようなものなのか?
結論からいうと、常時SSLは、メインのページではなく2階層、3階層、4階層のSEO対策に手を掛けられないページに対して効果を発揮します。
今まで手を掛けられなかった下層のページがまるごと安全なページになることで、個別に内容に手を加えなくても自然とSEOの評価を上げられるということです。
たとえば、ECサイトやニュースサイトなど、沢山の下層ページを持つWebサイトであれば、商品や記事など、それぞれのページの検索順位が上がる可能性が高いというわけです。
GoogleやYahoo!などの大手サイトと違い、中小企業や個人が運営するWebサイトで「常時SSL」化されているものは、まだ多くありません。
だからこそSEO対策の視点でみると、ライバルよりも先に「常時SSL」化を行う必要があるのです。
【下層ページのSEO評価向上のメリット】
- 下層ページの表示順位が上がり、Webサイトへの入り口が増える
- ロングテールキーワード(スモールキーワード)でのアクセスが増える
- ページと親和性の高いニッチなユーザーが増える
- 下層ページの評価アップにともない、Webサイト全体の評価も上がる
HTTPS(暗号化通信)のデメリットって?
HTTPS(暗号化通信)によるSEO対策はメリットばかりではなく、デメリットとされてきた部分もあります。
しかし、インターネット業界全体で急速に進むHTTPS(暗号化通信)の動きにともなって、解決できる問題も多くなってきました。
最後にいくつか例をあげてご紹介したいと思います。
無料のSSLサーバー証明書で「コスト」問題を解決
HTTPS(暗号化通信)に必要なSSLサーバー証明書は、年間数千円~十数万円の費用が必要でした。
そこで最近登場したのが、無料の独自SSL証明書である「Let’s Encrypt(レッツエンクリプト)」です。
Let’s Encrypt は、個人の方でも無料で独自ドメインに対応した「SSL/TLSサーバ証明書」の発行が可能です。
証明書の発行からインストール、更新まで自動化されているのが特長です。
また、レンタルサーバーをご利用なら、Let’s Encryptや有名ブランド製のSSLサーバー証明書が無料で使える場合があります。
管理画面に必要項目を入力するだけで、取得やサーバーへの設定が行え、自動更新機能なども使えますので、専門知識や作業に不安のある方におすすめです。
例えば、当社が運営するレンタルサーバー「Zenlogic(ゼンロジック)」の場合なら、Let’s Encryptとシマンテックグループの独自ドメイン証明書「標準独自SSL」の2種類を、無料・無制限で提供しています。お使いのレンタルサーバーのSSL証明書関連サービスをチェックしてみてください。
HTTPSは速い!Webサイトの表示が早くなる「SPDY」と「HTTP/2」
TwitterやFacebookがすでにWebサイト全体を常時SSL化しているのはご存知でしょうか。
そして、それらのWebサイトを「遅い」と感じたことはありますか?
HTTPS(暗号化通信)のデメリットとして有名だったのが、Webサイトの表示速度の低下でした。
しかしGoogleによるWeb高速化の取組みから、「SPDY」や「HTTP/2」といった新しい通信技術が生まれ、これに対応したサーバーでWebサイトを運営することで、HTTPよりも高速な表示が可能になりました。
Chrome、Firefox、IE、Safariなど、主要ブラウザの最新バージョンは全てこの通信技術に対応しており、今後はHTTPS(暗号化通信)にしていないWebサイトの方が、表示が遅いといわれる時代が来そうです。
SEO評価を引き継げる「301」リダイレクション
HTTP(暗号化なし)のWebサイトをHTTPS(暗号化通信)にするにあたり、今まで頑張ってきたSEOの評価を正しく引き継げるのかを心配する方も多いです。
これに関しては、GoogleのJohn Mueller(ジョン・ミューラー)さんがGoogle+で回答しています。
一時的に不安定になったりWebサイトの規模によって時間がかかることがあるかもしれないが、正しい設定で移行を実行できていれば元の状態は維持される。
Webサイト運営者から寄せられた質問に対して、さらに「301」のリダイレクト転送を設定しておけばHTTP(暗号化なし)のSEO評価をHTTPS(暗号化通信)に引き継げる。
との回答もあることから、HTTPS(暗号化通信)によってWebサイト順位がゼロに戻ってしまうような現象は無いと考えられます。
リファラー情報は「metaタグ」で渡せる
メディア系のWebサイトなど、他のWebサイトへリンク(被リンク)を貼ることでWebサイトの価値を上げている場合、相手先がHTTP(暗号化なし)のままだと、相手側にリファラー情報(参照元情報)を渡せなくなってしまう(メディアからの誘導数が相手に伝わらない)という事態が起こりえます。
そんな時には<header>タグ内に「meta name=”referrer”」タグを設置することで意図的にリンク先Webサイトにリファラー情報を渡せます。
しかし、現時点ではまだ一部のブラウザではこのタグが使えないこともあり、リファラー情報の受け渡しがWebサイトにとってどのくらい重要かがHTTPS(暗号化通信)にするかの判断基準になります。
HTTPS(暗号化通信)非対応の広告素材は無くなっていく
アフィリエイトなどの広告掲載で収入を得ているWebサイトの場合、HTTPS(暗号化通信)することでHTTP(暗号化なし)素材の掲載ができなくなり、広告収入が減少するリスクがありました。
しかし、GoogleはもちろんHTTPS(暗号化通信)対応の広告コードを提供していますし、2016年7月には国内最大手のアフィリエイトサービスA8.netも、広告素材のHTTPS(暗号化通信)を発表しています。
A8.netのアフィリエイト広告タグがSSL化しました。
HTTPS(暗号化通信)化されたWebサイトの増加に伴い、広告をはじめとする外部のコンテンツを読み込むサービスも、どんどんHTTPS(暗号化通信)への対応が広まることでしょう。
HTTPS(暗号化通信)のデメリットとされていたことが、インターネット業界の流れに従い、それぞれ解消に向かっています。
「HTTPS(暗号化通信)(常時SSL)は、やらなくていいか」という考えが、逆にデメリットになる場面も増えてくるかもしれません。
この記事のポイント
- SEO対策の近道は良質なコンテンツを作ること
- 検索エンジンはユーザーが安全に使えるWebサイトを判断してSEO(検索順位)を優遇する
- HTTPS(暗号化通信)はSEO対策に手が掛けられない下階層のコンテンツに効果を発揮する
- HTTPS(暗号化通信)のデメリットは確実に無くなりつつある