株式会社ミラティブ様
「クラウドの限界=サービスの限界にしたくない」、1000分の1秒単位で突き詰めるミラティブのこだわり
ライブ配信サービス事業者導入事例
2018年にDeNA社から独立したミラティブは、スマホゲーム配信者数で日本一のゲーム配信サービスを手掛ける企業です。同社が提供するスマホ画面共有型ライブ配信プラットフォーム「Mirrativ(ミラティブ)」(以下Mirrativ)は2021年2月に配信者数300万人を突破、配信者同士のフォロー数は1億を越え、多くの“つながり”を生む新しいSNSとして成長中です。
「友だちの家で一緒にゲームをやっているような感覚になって欲しい」、そう語るのは同社で、インフラ基盤の設計開発、ミドルウェア開発、および、次世代配信基盤の設計開発までを一手に引き受けるインフラ・ストリーミング マネージャ 漢祐介(ハタユウスケ)氏です。
漢氏に「Mirrativ」へのこだわりと、そのこだわりにIDCフロンティアがどうお役に立っているのか、忌憚のないご意見を伺いました。
アプリの遅延低減と高画質へのストイックなこだわり
—はじめに「Mirrativ」を提供する上で、大切にされていることをお聞かせください。
ゲームはオンラインが一般的になり、家にいながら遠くの友だちと遊べるようになっていますよね。でも昔は誰かの家に集まってテレビを囲んでゲームを楽しんでいました。
「Mirrativ」ではあの感覚をオンラインで再現したいと考えています。
そのためには、遅延をできるだけ少なくする必要があると考えています。遅延はコミュニケーションへの影響が大きく、1秒遅れるだけで「ボスが出た」「良いアイテムが出た」などの大事なポイントで、見ている人と一緒に楽しむ感覚がずれてしまうので、ストイックにこだわっています。また綺麗な画質であることも臨場感を出す上で大変重要です。
サービスは常に一番いい場所(インフラ)で動かすべき
—低遅延、高画質を実現するために、インフラはどのような考え方で選定されているのかを伺いました。
すべてのものは良い場所(クラウド)で動かすべきだと思っています。
4~5年も経てば間違いなく今よりいい技術・いいサービスが出てきますので、そうなった時に、より良いクラウドに乗り換えたい。だから「Mirrativ」はベンダーロックイン・クラウドロックインをなるべく少ない状態で運用したいと考えています。
システムとクラウドはAPIで疎結合するようにし、いつでもより良いクラウドに乗り換えられるようにしています。
画像配信の運用工数を削減しつつ、端末ごとに最適な画像を配信可能に
—インフラ選びには厳しい目を持っていらっしゃる同社に、IDCフロンティアのサービスをご利用いただくことになった経緯を伺いました。
以前は「Mirrativ」の配信の録画機能に、グローバルなクラウドサービスのCDNやオブジェクトストレージを利用していました。メイン機能である動画配信は「IDCFクラウド」で行っていたため、クラウド間のインターネット通信のコストがかかっていました。
そこで録画機能も「IDCFクラウド」に移設し、機能間の接続にはサービス間を閉域網で接続できる「バーチャルブリッジ」、録画データの保存先には大容量ディスクの「ベアメタルサーバー」を利用しました。
CDNに関しても、機能の利用による運用工数の削減を期待して、コンテンツ配信サービス「IDCFクラウド CDN*」へ切り替えました。
* Fastlyのエッジクラウドプラットフォームを基盤として採用したコンテンツ配信サービス
運用工数を削減し、端末ごとの最適な画像配信を可能に
—「IDCFクラウド CDN」をご利用いただいたことでどのようなメリットがありましたか?
以前利用していたCDNは、ユーザーがアクセスする地域ごとにエッジロケーションが設けてあるようで各地域からオリジンサーバーにリクエストを投げてしまい、地域の数だけオリジンサーバーへ負荷がかかっていました。そのため内製のシステムを構築しCDNのエッジロケーションとオリジンサーバーの間でリクエストをある程度まとめてからオリジンサーバーへデータを取りにいくようにしていました。
「IDCFクラウド CDN」のオリジンシールド機能*1はまさにその役割を果たすので、乗り換えたことで内製ゆえのメンテナンスや急激なトラフィック増への対応がなくなるなど手間が大きく削減できました。
またその後、「IDCFクラウド CDN」のオプションサービスである「イメージオプティマイザー*2」も導入しました。これまではデザイナから上がってきた画像サーバー側でリクエストがあるたびに生成していたのですが、「イメージオプティマイザー」によりこの処理が自動でできるようになりました。
リクエストされた画像を端末最適化したもので返すというのも、VCL(Varnish Configuration Language)で書いてコントロールできるようになったので、大きな手間をかけることなくスマホからタブレットまで端末ごとに最適な画像が配信できるようになりました。
*1 オリジンサーバーに対して、必ず経由するPOP(配信拠点)をいずれか1つ指定することができるFastlyの機能
*2 画像を動的に最適化できるFastlyの機能
サービス間接続「バーチャルブリッジ」導入により通信費を63%削減
—コスト削減も実現したのでしょうか?
録画データの保存先をオブジェクトストレージからIDCフロンティアの「ベアメタルサーバー」へ乗り換えることで71%のコスト削減ができる目途がたっています。
また、サービス間を閉域網で接続できる「バーチャルブリッジ」も導入し、従来はインターネット経由で通信していた部分を内部ネットワーク化できたことによるメリットは大きいです。
「バーチャルブリッジ」により通信を内部化したことで、インターネットへのアウトバウンドが大幅に削減され、結果として通信費用を63%カットすることができました。
IDCFクラウド環境のインターネットとの通信は「マネージドロードバランサー」を経由しており、物理的に帯域の制限がありますが通信の内部化によってアウトバウンドが大幅に削減されたため、向こう数年は「マネージドロードバランサー」を1つ2つ増やせばスケールできる程度に改善しました。加えてクラウドリソースとしても内部ネットワークの拡張によりスケール可能であることが見えています。
「バーチャルブリッジ」の導入に関しても、L2接続であるという点が良かったです。アプリケーションやミドルウェア側の対応はほとんどなく、外側のDNSの名前解決を内側のDNSに切り替えたくらいです。考え方も一般的なクラウドで言うのサブネットのようなネットワークで違和感は少ないです。
仮想マシンの高い安定性と、データセンターのような感覚で使えるIDCフロンティアのサービス
—IDCフロンティアのサービスをご利用いただいた感想をお聞かせください。
まず、「IDCFクラウド」の仮想マシンが非常に安定しています。
以前使っていたクラウドサービスでは仮想マシンを100台くらい一気に起動させ続けていると1台は落ちる感覚でしたが、「IDCFクラウド」ではそれがほとんどありません。
仮想マシンのスペックに関わらず標準のネットワーク帯域が2Gbpsと大きいところも良いですね。
以前使っていたクラウドサービスはマシンのスペックに連動してネットワーク帯域が変わっていたので、ネットワーク帯域を上げようとするとマシンのスペックも一緒に上がり、結果的にオーバースペック気味になってしまいました。
また、「IDCFクラウド」をはじめとしてIDCフロンティアのサービス群はデータセンターのような感覚で使えるクラウドだと感じています。
例えば、一般的なクラウドのロードバランサーは細かな設定ができません。HTTPでアクセスするようなWeb系のサーバーであれば充分ですが、冗長化や安定して配信を継続させるための機能が足りません。これを自分たちで作ろうとすると、それなりの規模のデータセンターに自前で構築しないといけないので難しいです。
IDCフロンティアの「マネージドロードバランサー」は、専有アプライアンス型のロードバランサーですので、映像の配信に使うような冗長化のバランシングをいい感じに設定できるので助かっています。
「IDCFクラウド」自体にはそこまで豊富な機能があるわけではありませんが、組み合わせて使えるアプライアンスや物理サーバー、またバックボーン接続、サービス間接続などネットワーク関連のオプションが充実しているところが大きな魅力だと思っています。
サービスの規模感が大きくなってくると、配信だけでなく外部からの悪意ある攻撃にも気を払わなければなりません。
以前利用していたクラウドサービスでは、DDoS防御を行うためにクラウド内に用意されたロードバランサーを前段に配置しなければならず、「Mirrativ」のような配信サーバーがたくさんある構成には適していないのですが「IDCFクラウド」にしてからは、上位のバックボーンネットワークに標準で透過的なDDoS対策システムが設置されているので、特別な構成を組む必要がなく防御できるのでとても助かっています。
ここはお勧めのポイントですね。
人々の生活に根付くコミュニケーションサービスとして成長させたい
—最後に、同社の今後の展望をお聞きしました。
「Mirrativ」は、今後コミュニケーションサービスとして強化していきたいと思っています。「配信」という言葉すら意識しなくなるような、配信がコミュニケーションそのものであるようにしたいです。
「Mirrativ」の海外展開も狙いたいですし、世界レベルのサービスにするためのインフラ設計をしていますから、果敢にチャレンジしていきたいです。
私個人としては、自分で作ったサービスが一番良いと思えるよう、日々使い倒して改善をしています。多くの人々の生活に根付くコミュニケーションサービスになるところまで「Mirrativ」を成長させていきたいですね。
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導入企業様 会社概要 | |
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会社名 | 株式会社ミラティブ |
設立 | 2018年2月 |
代表取締役社長 | 赤川 隼一 |
事業内容 | ライブ配信プラットフォーム「Mirrativ(ミラティブ)」の運営 |
URL | https://www.mirrativ.co.jp/ |
※掲載内容は、本事例の掲載日時点の情報です。
※記載されている会社名、製品名は、各社の登録商標または商標です。
2021年06月04日掲載